既存の研究をもとに自分の研究を組み立てましょう

今までの記事で述べた通り、ジャーナル編集者と査読者は、あなたの研究が既存の文献とどのくらい適合しているかを審査します。また、リサーチ クエスチョンが重要なものか、研究結果が有用か、研究方法が倫理的に問題がないかをチェックします。

臨床医学におけるリサーチ クエスチョンを設定する際の基準として、 Hulley (2007)らが提案したFINER があります。

  • Feasible—実行可能か。十分なリソース(時間、スタッフ、資金)があるか
  • Interesting—科学的に興味深いものか。好奇心を刺激するか
  • Novel—新しく独創的か。ナレッジギャップを埋めるものであるか
  • Ethical—倫理審査委員会が承認する研究デザインまたは方法を採用しているか
  • Relevant—その研究が臨床研究を改善し、科学的な研究と政策の進歩に貢献出来るか

文献を定期的に読むことで、その研究分野におけるナレッジギャップを見つけることができます。見つけたナレッジギャップは新しいリサーチ クエスチョンとなり、次の研究プロジェクトの基礎と目的を形作ります。

Reference: Hulley SB, Cummings SR, Browner WS, Grady DG, Newman TB. Designing clinical research. 3rd ed. Lippincott Williams and Wilkins; 2007

リサーチ クエスチョンに注目する

リサーチ クエスチョンは、その研究のガイドの役割を果たします。リサーチ クエスチョンは、明確かつ、焦点を絞ったものであり、過去の文献を用いて独自の仮説を示します。研究者は研究の初めから終わりまで、その研究の独自性と、なぜ人々が注目すべきかを自らに問い続けなければなりません。

研究プロジェクトを成功させるには、その分野で人々が日々直面する問題について、既に研究されている知識を元にした、リサーチ クエスチョンを立てることが必要です。 共同研究者とよく議論し、プロジェクトのスーパーバイザーと共に、磨きをかけてください。リサーチ クエスチョンは、研究者が使える時間やリソースの中で、成果を発表できるような具体的でフォーカスを絞ったものである必要があります。

リサーチ クエスチョンの例

  •       悪い例: 抗精神病薬とアルコールの関係は何か?(疑われる関係性について、非常に不明瞭である)
  •       ベターな例: 抗精神病薬の服用は、アルコール摂取にどう影響を与えるか? (問いは明確にはなってきたが、具体的にどのような影響が疑われるか、さらに明確にする必要がある)
  • ベストな例: 抗精神病薬の服用は、アルコール摂取時の記憶障害を増幅させるか?(リサーチ クエスチョンに対し、具体的にどのような影響を疑っているのかが明確になっている)

例: ビジネスと経済

経済研究・理論とビジネス プラクティス方針は、多くの分野で人への調査を伴います。日々、経済的観点に基づいた政治的決定や、ビジネス上の判断がなされますが、それらの元になっているのが、学説に基づいているか、データに基づいているか、またはその良し悪しに関わらずです。 私たちが毎日目にするニュースの見出しにも、経済的理論やデータの特徴やデータを暗示させる内容が使われています。言い換えれば、ビジネスと経済分野のリサーチ クエスチョンは容易に見つけられるということです。

先ず、こちらをお読みください。どのジャーナルが、計量経済学から、民族組織学や、生態モデルなど、あなたの専門分野のリサーチ クエスチョンについて注目するか確認してください。主なクエスチョンは次の通りです:

  • 主流か異端のどちらの出版物が、あなたの経済の定義と領域の理解を反映していますか
  • ビジネスや経済の動きを理解する際、社会科学や自然科学の手法を用いますか ご自身を経験主義(おそらくは実験主義、または統計主義)だと思われますか それとも、理論家だと思われますか
  • 数学は経済を読み解く鍵だと思いますか。どの数学が、どのように応用されると思いますか
  • 資本主義を応援しますか、それとも評論家でしょうか
  • 人々の人件費、社会的費用、環境コストへの説明責任に対する要求が高まる中、経済とビジネスの観点から会計を再定義する準備はありますか。また、その逆はどうでしょうか。
  • 経済的局面で、現実的、科学的、倫理的のどれに同意しますか
  • あなたは、決断と(または)策略の理論家ですか。政策立案の技術的な詳細に強い関心を持っていますか。供給サイドの経済学はどうでしょうか
  • ビッグデータは、研究、社会的勢力、理論への挑戦、または知識の宝庫だと思いますか

The American Economic Associationのオンライン リソースである、 EconLit RePEc EconPapersは、いくつかのデータベースや収録の中で、あなたの研究における解決済み、未解決の疑問や書籍・ジャーナル、(検索困難、又は未出版の)”グレー”な文献の検索に役立つ Journal of Economic Literature (JEL) コードを使うことが出来ます。それらを使って、クエスチョンに対する異なるアプローチが出来るでしょう。

他の分野の学問と同様に、研究におけるクエスチョンは、未解決又は、部分的な解決しかなされていないものに限ります。あなたの研究成果は、研究分野の知識を増大、または改善するものでなければなりません。その際、必ず適切な方法論を取りましょう。 しかし経験的経済研究に使われている基準の手法は経済学者が独自の手法の妥当性に取り組んだり、他の研究分野の手法を用いた批評や変化に耐えなければなりません。ジャーナルは、あなたの研究が現実的な世界にどのような関わりを持ち、影響を与えるかに興味を持っています。

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