『研究の限界』を書くことで、評価は上がる 

研究で何が出来なかったかをオープンにすることは、実は非常にポジティブなことで、編集者や査読者からも好意的に見られます。また、研究のインパクトを損なうことなく、限界(制限)について書くスキルを身につけることは、研究者としての評価を高めるための、価値ある強みの1つとなるでしょう。 

研究で出来なかった、つまり「失敗」した可能性のある領域は研究の限界と呼ばれ、次のような内容が挙げられます。 

  • 研究の目的(少し意欲的過ぎた)
  • 研究デザイン(適切でなかった)
  • 裏付けとなる文献(未知の領域だった)
  • サンプリング方法(雪だるま式にすればよかった)
  • 調査対象となる母集団のサイズ(十分ではない)
  • データの収集方法(バイアスがかかっていた)
  • 交絡因子(予想外だった)

限界は、研究そのものや、研究者の評価を損なうものではありません。それどころか、逆に研究を正当化し、分野への貢献を増大させるものだと言っても過言ではありません。 

研究の限界は、インパクトを低下させることなく、簡単かつ有用な方法で書く事が可能です。しかも、限界を書く事によって、むしろ研究のインパクトを増大させることも可能なのです。 

研究の限界が重要な理由 

残念なことに、「publish-or-perish (出版か死か)」の精神が、研究者たちに成功した結果のみを発表するようプレッシャーを与えています。また、学術ジャーナルは、仮説を裏付けるような肯定的な研究を好むと言った背景も、限界について述べる事をためらう原因の1つではないでしょうか。 

しかし、成功のみが科学ではありません。皆さんもご存じの通り、科学とは本来「trial and error」、すなわち試行錯誤するものです。 

それ故、研究内容をバランスよく、包括的に説明することが大切になってきます。そして、説明すべき内容には限界も含まれます。限界を正確に報告することで、次の効果が期待できます。 

  • 失敗を繰り返すことによる、研究の無駄を防ぐ
  • 新たな仮説の創造に繋げる
  • システマティックレビューの有用な情報を提供する
  • 研究の頑健性をさらに実証する

研究の限界だけでなく、否定的な結果や成果についても明確にすることで、実は査読者を含む読者に、次のような有益な情報を提供することが可能になるのです。 

  • 肯定的な結果に関する情報 
  • 調査結果が信用できる理由の説明 
  • 将来的な仮説構築のためのアイデア 
  • 研究のインパクト 

失敗のためのジャーナル(Journal of Trial and Error)もあるくらいですから、科学における失敗がどれだけ重要かお分かりいただけるのではないでしょうか。 

著者の中には研究の限界について書く事は、失敗を認める事だと考え、なかなか書かない人もいるでしょう。もちろん、大々的に書く必要はありませんが、ぜひこの機会に、限界について書く事の重要性を考えてみてください。 

研究の限界を知ることで、予測して記録できる 

研究やデータ収集を開始する前に、これから調査しようとしている内容や、その結果について、ある種の限界を意識することがよくあります。これらの限界は、大きく分けて次の3つの領域について感じる限界ですが、実際はそれよりも多くの限界がある事は明らかです。それを実感した時に研究者は、自分の研究の限界を認めることになるのです。 

研究デザインの限界 

研究デザインの限界には、利用可能な手順、実験、試薬または資金が含まれる場合があります。また、研究対象に関する特定の制約がある場合もあります。そのほかにも、倫理的ガイドラインや、機関や国の方針により、実施可能な内容に対する制限などにも十分な注意を払う必要があります。 

これらは医学研究分野において、非常に一般的な制限と言えます。このような制限を、研究デザインの限界(または制限)と呼びます。例を挙げると、臨床試験では、プラスの効果が期待される介入の制限がある場合があります。あるいは、研究対象者に基づくデータ収集の制限がある場合などがそれに当たります。 

研究のインパクトの限界 

たとえ強固な研究デザインと統計的な基盤がある研究の場合でも、地域、国、または種に基づく特定の焦点があるかもしれません。あるいは、その研究が個体群や実験に特化した研究である可能性もあります。 

素粒子物理学や分子生物学など、研究分野全体が斬新的な発見を促すものでしかない場合もあります。 

ただし、このような特殊なケースでは、研究そのもののが与える影響には、本質的な限界があると考えます。したがって、研究結果が持つ影響力にも限界が発生するのです。ただし特定の分野や領域への影響について制限する訳ではないため、研究のインパクトに注目しながら進めると良いでしょう。 

統計やデータの限界 

おそらく最も一般的な制限は、統計的またはデータに基づくものと言えるでしょう。 

この種の制限は、実験(例:化学など)やフィールドベース(例:生態学、集団生物学、質的臨床研究など)の研究で非常によく見られます。 

仮説検証の多くの状況において、登録が予想以上に困難であったなどの理由から、自分が望むだけのデータの量や質の高いデータが収集できず、十分な結果が得られない場合があります。 

統計的な限界は、研究デザインに起因することも多く、結果の解釈と言う点において、さらに深刻な問題を引き起こす可能性も含んでいます。そのような場合は、エダンズの研究者向けサービスのご利用をご検討ください。研究デザインを始める前に、経験豊富なエダンズの統計の専門家からレビューを受ける事で、結果的には全体の効率化に繋がり、さらに出版までの道のりをより早く、スムーズに進めることが出来る可能性があります

writing about research limitations – Edanz Learning Lab

その他の限界 

ここまでに述べた3つの限界は、多くの場合、相互に関連しています。ただし、これらの限界は、決して包括的なものではありません。 

これまでに説明してきたように、限界の中には文献による制限もありますし、外的交絡因子によるものや、例えば質的調査のために10人の的確な回答者を見つけるために時間を要したなどの予想もしなかったものなど、実にさまざまです。 

研究の限界をどのように書くか 

自分の研究の限界が分かったら、本ブログで一番お伝えしたいポイントである、研究の限界について、どのように論文に書くかを見ていきます。 

書き方のコツとして、研究の限界を貢献度やインパクトという観点で書くことで、ジャーナルからの採択の可能性を最大限に高めることが可能です。 

査読者、編集者を含む読者は、あなたが論文を権威あるものとして提示することを期待しています。なぜなら、あなたはその分野でのエキスパートなのですから。そのため、読者が論文に批判的になる場合もあるでしょうし、否定的な解釈をするかもしれません。それらに対抗するためには、それぞれの限界や制限を丁寧に説明したうえで、その結果の重要性や有用性を示すことが大切です。 

研究の限界は、論文のどこに書くべきか

限界や制限事項は通常、考察(Discussion)のセクションの最後に記載します。その他にも、特に長い論文やエッセイ、博士論文などの場合は、随所に追加することも可能です。そうする事で、読者にとっては論文が読みやすくなるでしょう。

研究の限界について書く:使うべき言葉と構成について 

  • This study did have some limitations.(この研究には、いくつかの限界がありました。) 
  • Three notable limitations affected this study.(3つの顕著な限界が、この研究に影響しました。) 
  • While this study successfully x, there were some limitations.(この研究は、成功的にⅹとなりましたが、いくつかの限界もありました。) 

具体的な数字を示すことで、読者にとって内容を追いやすく、さらに文章のガイド的役割も果たします。しかし、制限事項が多い場合は、番号を付ける必要はありません。リストの項目が少ない時にのみ、次のように書くと良いでしょう。 

  • First,… 
  • Second,… 
  • Third,… 

ただし、3つ以上の項目がある場合は、番号を付けることで返って読みにくくなり、困惑させてしまう恐れも出てきます。常に読者の立場に立って考える事が大切です。 

では、項目が多い場合、読者にとって読みやすく、興味深さを持続させるには、どうすれば良いでしょうか。次のように、言葉に変化を持たせることで、読者を惹きつけ、適切にガイドする方法がおすすめです。 

  • The first issue was…
  • Another limitation was…
  • Additionally,…
  • Moreover,…
  • Finally,…

研究の限界を、読者を惹きつけつつ書くのは確かに大変な作業です。しかも、限られた執筆時間でとなると、さらにハードルが上がりますよね。そんな時は、エダンズの経験豊富な専門家にお任せください。より自然で読みやすい英語に仕上げるお手伝いをさせていただきます! 

制限事項を書く際の構成 

リード文(導入文)の後、発見とそれに関する制限を書き、簡単に解釈を述べます。必要であれば裏付けとなる内容も添え、次のステップを示します。 

このパターンに従うことで、何が起こり、それが何を意味するのか、またその理由と、今必要なことは何かという事を、読者は完全に理解することが出来るのです。 

こうすることで、研究の限界を認めつつ、研究者としての評価をさらに確立することが可能になります。また同時に、読者にも簡単なロードマップを提供することとなり、これらすべてが影響力のある貢献であると言えます。 

より広域な限界について書く 

研究の限界を詳細に説明することは、必ずしも論理的であったり、論文の読みやすさに繋がるとは限りません。限界を説明する際に必要なのは、説明すべき制限と、正当性を主張することです。 

例として、日本のプライマリヘルスケアのクリニックで、6か月間の体重介入を調査したとします。結果は概して良好でしたが、日本人の患者しか調査していないので、これらの知見が他の文化や国籍を持つ患者に拡張できるかは不明だとします。 

この調査は、失敗だったと思いますか? 答えはNOです。調査はむしろ成功したと言えます。調査は成功でしたが、ただし限界はあります。そして、他の研究者たちはそこから学び、それを基にして、次の研究に進むことが出来るのです。論文には、それらのことを限界として書き込めばよいのです。例えば、次のように書く事が出来ます。 

Finding: We found that, in the intervention group, BMI was reduced over 6 months.

Interpretation (and support): This suggests a regimen of routine testing and measurement followed by personalized health guidance from primary physicians had a positive effect on patients’ conditions.

Support: Yamazaki (2019) and Endo et al. (2020) found similar results in urban Japanese clinics and hospitals, respectively.

Limitation and how to use it: While these are useful findings, they are limited by only including Japanese populations. This does not ensure these interventions would be as effective in other nations or cultures. Similar interventions, adapted to the local healthcare and cultural conditions, would help to further clarify the methods.

このように書く事で、発見の価値や限界、そしてそれらを使って何をすべきかが明確に述べられるのです。いかがでしょうか?この書き方だと、しっかりインパクトが伝わりますよね! 

ブレークスルーとニッチな限界に対処する方法 

その他のハードルとして、結果が特に新規性の高いものであったり、あまり研究されていない分野である場合です。これらの限界は明確に述べる必要があります。その際、結果の新規性を補強するための説明をすることで、発見を支持することが出来ます。 

新しい分野を開拓する場合、おそらく多くのナレッジギャップが存在するでしょう。この種の限界をフォローアップするには、結果に基づき、より強固で総体的なエビデンスの基盤を構築する必要があります。それには、次にどのようなステップが必要かを説明すると良いでしょう。 

wirting abour your limitations

重大な欠陥への対処 

研究によっては、研究結果の信頼性を低下させるような、「重大な」欠陥がある場合もあります(通常は、研究デザインにおいて)。 

他の専門家も、査読時やあるいはプレプリントサーバーでそれに気づくでしょうから、なぜこのエラーや欠陥が生じたのかを説明するのが一番良い対処法と言えます。 

その場合も、なぜその研究を繰り返す価値があるのか、どのようにその現象を再調査する予定なのかを説明することは可能です。そして、重大な欠陥があっても、引き続き論文の出版を目指す場合は、出版目標を控えめにする必要があるかもしれません。 

著者の熱意を抑えて、読者の期待値をコントロールする 

科学に初めから完璧を求める人はいません。時に、同僚から厳しい指摘を受けることはありますが、どんな研究も限界を超えてはいません。そのことを心に留めておくことが重要です。 

エダンズには、経験豊富な専門家による科学的評価を行い、限界を探るお手伝いをするサービスがあります。 

知識の基盤は、パズルのピース1つ1つを明らかにしていくような過程で成り立っています。つまり研究の限界は、新たな努力が必要な箇所を示しているのです。査読のように、限界を悪としてとらえるのではなく、新たなチャレンジの機会としてとらえてください。 

最終的には、あなたの示す研究の限界は、他の誰かのインスピレーションとなるかもしれません。目標ジャーナル掲載される際は、論文にそれらを書き含めることが大切です。 

全ての研究は何らかの問題に直面します。研究の限界を知りつつ無視するよりも、正直に認める事の方が、遥かに人々を感動させるでしょう。そのことを念頭に、研究の限界の執筆に取り組み、研究者としての高い評価に繋げてください。Good Luck! 


Leave a Comment

Scroll to Top