文献を吟味しましょう • 文献からナレッジギャップ(未知の領域)を発見しましょう

研究プロジェクトを開始する前に、徹底的に文献レビュー(先行研究レビュー)を行ってください。文献レビューは、どのような研究がすでに行われたか、どのように行われたか、またどのようなナレッジギャップ(未知の領域)が依然存在しているか、を判断するために必要不可欠です。  

既存の研究は、ほとんどの場合、再現するには値しません。必要なのは、ユニークな技術、母集団、環境などを使用した特別な場合のみです。したがって、自身の研究分野に貢献をするためには、既存の研究に精通していなければなりません。

 

 

まず何をするか?

文献の吟味は、まず、論文をデータベースで検索することから始めます。

ここで、それぞれのデータベースで、インデックスされている論文(検索できる論文、登録されている論文)は異なることに注意してください。多くの研究者が利用している Google Scholarは、インデックスの要件は厳しくありません。信頼できるジャーナルだけでなく査読のないソースやハゲタカジャーナルを含む、信頼性の低いジャーナルも検索結果として表示されます。Google Scholarを利用する際は、このことに留意しましょう。

最初に検索するデータベースとして代わりにおすすなのは、Scopus Web of Scienceのような、広範囲にわたる学術的データベースです。そして、PubMedPsycINFOや、SciFinder等、分野に特化したデータベースを検索しましょう。例えば、Reaxysは、化学者が化合物と反応を見つけるために使用します。その他、Cochrane Library(コクランライブラリー)は、臨床医が臨床検査や、システマティックレビューを検索する際に用いられます。

それぞれのデータベースをたくさん使い、慣れておきましょう。データベースによって追加の関連する論文を見つけることができます。例えば、PubMedで検索した論文の概要ページには、その論文を引用した論文、総説論文(review article)、関連論文のタイトルの一覧が表示されます。引用した論文を確認すればそのトピックの最新の調査について知ることができますし、総説論文は関連する論文を知ることができ、文献レビューにとても役に立ちます。

自分の専門分野で評判の高いジャーナルのウェブサイトを訪問することを習慣にしましょう。サイトのe-Alerte-TOCなどのメール通知を活用すると、簡単に最新情報を入手できるようになります。通常、名前と国名、Eメールアドレスなどを入力するだけで登録できます。

それぞれのデータベースは、異なるアルゴリズムを使っています。2つ以上のデータベースを利用して論文の検索をしましょう。広範囲にわたるデータベースを1つと、研究分野に特化したデータベースを少なくとも1つ以上を使うことをおすすめします。

例: 言語学

言語学や工学、コンピュータ等の学科のジャーナル論文の多くは、短いイントロダクション(introduction)セクションからはじまり、著者の研究分野とトピック、仮説の紹介から始まります。その後、文献批評または文献レビューへと続き、現在の研究と理論の評価、さらなる議論について述べます。現在発表されている研究と、その論理的な強みと弱点、反するエビデンスなどを再評価します。

研究トピックは、文献の文脈に適合しなければならず、研究の重要変数は、文献批評の中で定義され説明されなければなりません。人文分野、社会科分野においては、文献を引用することができますが

、あまりに長い文章にならないようにする必要があります。引用は、引用符を使用するか、分量が多い場合は字下げをして記載します。引用された資料は、首尾一貫した学術的な論拠となってくれるでしょう。

専門ジャーナルでは、文献批評で、その論文の弱点や、ナレッジギャップを特定することが期待されています。代替となる理論モデルへの道、裏付けるための根拠の種類を指摘するかもしれません。文献批評は、テキストやデータ分析による裏付けとなる証拠を含む場合があります。

 

文献からナレッジギャップ(未知の領域)を発見しましょう

文献レビューは、ナレッジギャップ(未知の領域)を見つけることに有用なだけでなく、リサーチクエスチョンを厳選し洗練されたものにするのにも有用です。また、文献レビューは研究開始後も必要です。なぜなら、他の研究者がその研究を先に完了する可能性もあるからです。特に論文を投稿する月や週には、必ず文献チェックを行いましょう。

すでに研究が実施され、主要な結果が何度も引用されている領域であっても、ナレッジギャップが見つかる可能性があります。

次のことを確認してみましょう。

  • 過去の結果が異なる研究を用いて再現されたことがあるか
  • 実施された方法は、それぞれどのくらい異なっているか
  • 新たな技術を生み出すチャンスがまだ存在するか

 

特に、比較的新しい分野では、まだ実施されていない方法も存在するかもしれません。技術の変化と進化により、研究デザインも刷新されていくものです。

また、研究条件や母集団の再検討も必要となることがあります。別の母集団で同じ結果が得られたことはあるでしょうか。身近なサンプルや対象で研究が実施されることがよくありますが、それが母集団として一般化できない可能性もあります。公表されている結果が、新たなサンプルや被験者でも再現できるかどうかを示す研究をデザインすることも可能です。ただし、そのような研究は新奇性には欠け、論文の出版の難易度が上がるので留意が必要です。

研究のアイデアを得るために、公表されている論文の「考察」セクションを吟味しましょう。将来的な方向性について考察されることがよくあり、対象分野のナレッジギャップを見つけるのに役立ちます。また、限界について考察されていれば技術革新の基礎として役に立つ可能性がありますし、同様の研究をしている研究者に対する警告となっている場合もあります。

 

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